目が合っただけで、それだけで
今日一日、嬉しくなってしまう。
そのくせ、少しも特別じゃないあなたの笑顔に、
胸の奥がぎゅっと苦しくなったりもする。
友達の輪の中で、自然に隣にいてくれるあなた。
会話の流れで笑い合う時間。
それだけで幸せなのに、
そのあとには、どうしようもない寂しさが、
いつも静かにやってくる。
だって、わたしの“好き”は、
誰にも、あなたにも、言葉にしていないから。
ほんの少しだけ早く家を出て、
学校や職場の近くのコンビニで偶然を装ってみたり、
SNSであなたの「いいね」がついてる投稿を見て、
似たようなものを買ってみたり。
そんなふうに、あなたのことを追いかけている自分に、
時々、情けなさと愛しさが混ざって、涙が出そうになる。
「なんでそんなに優しくするの?」って、
心の中で何度も問いかけた。
風邪気味だったわたしに、そっと差し出してくれた飴玉も、
荷物を落としたときに拾ってくれた仕草も、
全部、わたしだけに向けられたものだったらいいのに――って。
だけどあなたの優しさは、
いつも誰にでも平等で、
そのことがまた、わたしを立ち止まらせる。
伝えたら、関係が壊れてしまうかもしれない。
でも、伝えなければ、このまま、ただの“知り合い”のまま。
その狭間で揺れながら、
今日もわたしはあなたの声を、目線を、
ひとつ残らず拾っては、
小さな幸せにすがってしまう。
あのとき、
駅のホームでふと話しかけてくれたこと。
スマホを見て笑ったとき、わたしをそっと覗き込んできたこと。
あなたにとってはただの一瞬でも、
わたしにとってはずっと忘れたくない記憶になっている。
言えない「好き」は、
どこへ向かえばいいんだろう。
この気持ちは、
あなたに届くことなんて、あるんだろうか。
でも、もしも。
もしも、あなたがほんの少しでも、
わたしに向ける気持ちを持ってくれているなら。
その時はもう、隠したりなんてしない。
震えても、涙が出そうでも。
ちゃんと目を見て、言いたい。
「ずっと、あなたのことが好きでした」って。
